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疲労と精神疾患【日生病院 健康コラム第5弾 その@】
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1.はじめに
1999年に国立公衆衛生院の簑輪・谷畑により行われた疲労の実態調査では、一般住民の6割が現在あるいは過去1年間に疲労を感じていることがわかりました。病気によるもの(14%)、 明確な原因があるもの(49%)のほか原因が不明なものが36%もあり、このうち疲労のために休職・退職を余儀なくされているものはそれぞれ11%、0.4%、0.5%に達していました。
つまり全住民の0.4%、実に250人に一人が、明らかな病気ではないのに疲労のため休職・退職していることになります。さらに作業量低下を含めて何らかの障害のあるものは、この20倍にも達すると推計されています。従って、疲労への対処は労働生産力・健康の両面で国民的な課題となってきています。
2.症状としての疲労とは?
疲労とは一般的なことばですが、その実体を整理する必要があります。締め切り仕事や徹夜の後の感覚と、睡眠を長くとりすぎたあとの感覚は同じ「疲れた」ということばで表現されますが、明らかに異なる感覚を指しています。また職場や家庭などの構成員が同じ仕事やライフイベントを体験している際に、そのうちの一人が「疲れた」と訴えると、他の人々は「どのような原因で疲れたのか」、従って「どのような感覚を訴えているのか」を暗黙のうちに共感・理解できます。しかし現代では個人の生活や仕事のスタイルが多様化しており、同居する親子の間においてさえ睡眠や食事などの時間帯が異なっていることも少なくありません。従って疲労の訴えを従来の方法で理解することは困難であり、より客観的な評価方法が必要になると考えられます。
疲労の客観的な評価法として、まず質問紙による評価があります。勤労者の疲労については日本産業衛生学会産業疲労研究会による「自覚症状しらべ」が長く使われてきましたが、小林・出村は勤労者以外にも対応する一般的な尺度として「青年用疲労自覚症状尺度」を開発しました。本尺度では、疲労を構成する因子としてねむけ、だるさ、集中思考困難、活力低下、意欲低下、身体異和感が挙げられています。疲労診療での使用が推奨(CDC,2002)されている尺度にChalder Fatigue Scaleがあります。ここでも疲労の精神面の症状としてねむけ、集中力・思考力低下、記憶力低下、活力低下、気力の易疲労性、意欲・意志減弱、興味喪失、休息欲求が、また身体面の症状としては困難感、弱々しさ、筋力低下、喚語・滑舌困難が挙げられ、その因子はかなり似ています。
自覚症状からみた疲労とは「覚醒水準の低下」、「情報処理能力およびそれにかかわるエネルギー感の低下」、「痛みや重さなど身体感覚の増幅」などの群に分かれるとまとめられそうです。実はこれらの症状は神経科・精神科の診療で頻繁に取り扱われるものであり、疲労に中枢神経あるいは精神状態の問題がかかわっていることを示唆しています。
3.疲労と病気
次に、前述の疲労の実態調査において疲労を感じると答えた人がそうでない人よりも高率に有していた自覚症状と既往歴には、以下のようなものがみられていました。これらは疲労という現象そのものを表しているとは考えにくく、まず自覚症状は疲労している人の特徴(疲労しやすい特性や疲労の結果生じる対処)といえそうです。ここには、後述する慢性疲労症候群の診断基準と共通するものが多く含まれています。次に既往歴には疲労の原因になりやすい疾患と疲労の結果生じやすい疾患が含まれていると考えられますが、ここには人口ベースでの有病率によるバイアスがかかっていると考えられます。
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自覚症状
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頭頸部の痛み
筋肉痛・関節痛
口内乾燥
食欲不振・消化器症状
アレルギー
発汗・寝汗
精神神経症状
(視覚、思考力、集中力、記憶力)
動悸・息切れ・立ちくらみ
めまい
月経前増悪
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既往歴
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かぜ
湿疹
胃潰瘍
血液疾患
自律神経失調症
脱毛症
うつ病
交通事故の経験
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もしもあなたが長期間にわたり上のような疲労を感じ、休息をとり栄養を補っても改善しない場合、「どこか身体が悪いのではないか」と考え、内科・外科などの医療機関を受診することが考えられます。かぜを引いたときに発熱と同時に生じるように、疲労感は病気の警告信号でもあります。この場合、疲労を取り除く対症療法を行うのではなく、原疾患の治療をいそぐ必要があります。代表的な身体疾患には以下のようなものがあります。
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(慢性疲労症候群(後述)の診断に際して除外すべき身体疾患)
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悪性腫瘍
自己免疫疾患
限局性感染症(潜在膿瘍など)
急性・慢性細菌性感染症(心内膜炎、ライム病、結核など)
真菌性感染症(ヒストプラズマ症、分芽菌症、コクシジオイデス症など)
寄生虫感染症(トキソプラズマ病、アメーバ症、ランブル鞭毛虫症など)
HIV感染症
慢性炎症性疾患(サルコイドーシス、ウエーゲナー肉芽腫症、慢性肝炎など)
神経筋疾患(多発性硬化症、重症筋無力症など)
内分泌疾患(甲状腺機能低下症、アジソン病、クッシング症候群など)
薬物依存、中毒
その他の慢性疾患(呼吸器、心臓、消化器、肝臓、腎臓、血液疾患)
栄養障害
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日生病院神経科・精神科 医師 高橋 励
そのAにつづく
http://seiwabs.co.jp/akaruibn/sbs/tp_463.html
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